アプリに慣れた人は、選ぶ目より続ける目を磨いていた
アプリに慣れて、いちばん変わるのは選び方ではなく、見る場所だった。
この研究でわかったこと
上海の大学生を対象にしたこの研究では、マッチングアプリの使い方が、利用を重ねるなかで変わっていくという語りが見えてきました。レベル1は、よくわからないまま入り、目の前の反応に敏感になる段階。レベル2は、経験とともに相手を絞り込み、手間と効率を管理する段階。レベル3は、関係が続くかどうかに目が向き、親密さの意味そのものを考え始める段階です。さらに、周囲の目を気にして隠れて使う「アンダーグラウンド利用」が、面子の文化と結びついた形で見られました。デジタル上の親密さを進めることへの主観的な自信の変化は「love-efficacy(恋愛の自己効力感)」という概念で整理されています。
- 論文
- 恋愛でレベルアップする:中国の大学生のデジタルデートにおける、社会的交換の過程的な軌跡
- 掲載誌・公開
- Frontiers in Human Dynamics(2026-07-22)
- 方法
- 上海の18歳から25歳の大学生を対象に、2段階の調査、半構造化インタビュー、ウォークスルー観察を組み合わせた混合研究
- 原典
- https://doi.org/10.3389/fhumd.2026.1788168
関口美奈子の読み方
「アプリは最初が一番必死で、慣れたら楽になる」と思いがちですよね。でもこの研究が描いたのは、楽になるというより、見ているものが変わっていく道のりでした。レベル1では、返信が来たか、反応があったかといった目の前のフィードバックが気持ちを左右します。ここは誰もが通る入口なのだと思います。
面白いのはレベル2です。慣れるほど絞り込みは上手になり、手間をかけない工夫も増えます。ただ、ここからは研究の言葉ではなく私の読みですが、この段階には絞り込み上手の踊り場があります。効率が上がるほど、会う前から相手を点数化し、目の前の人の可能性まで削ってしまうことがあるはずです。縁の市場化のなかでは、計算が上達するほど関係が育ちにくくなる、という逆説が起こりえます。
レベル3は、関係が続くかどうかを見る「続ける目」が育つ段階です。親密さとは何かを考え始める、と報告されています。私はここに、持てる人の余裕の入口があると感じます。反応を待つ側から、安心を差し出す側へ回れるかどうか。続ける目は、相手を採点する目ではなく、一緒に育てる目だからです。
もうひとつ心に残ったのが、周囲の目を気にして隠れて使う「アンダーグラウンド利用」です。日本でも「アプリで出会った」と言いにくい空気を感じる人はいるかもしれませんね。隠すことに力を使うより、安心して話せる相手を持つほうが、自信、つまりlove-efficacyも育ちやすいのではないかと思います。
明日からの一手
- 今の自分がどのレベルにいるか、週に一度だけ振り返ってみてください。返信に一喜一憂していないか、条件で絞りすぎていないかを見ます。
- 条件で絞った相手でも、最初の対面では点数をつけず、ゆっくり話してから判断しましょう。踊り場から抜けやすくなります。
- アプリを使っていることを、信頼できる友人や相談相手にだけ話してみましょう。隠す重さが軽くなり、相手選びの相談もしやすくなります。
対象は上海の18歳から25歳の大学生で、ある一時点の調査と本人の振り返りに基づく語りです。実際に段階を追って確かめた結果ではなく、日本の婚活層にそのまま当てはまるとは限りません。
知識は、使う場所があって初めて効く
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