心理学

ラベリング
効果とは

関口美奈子

ラベリング効果とは、周囲から貼られた言葉のとおりに、その人の行動や性格が、あとから寄っていく心理です。貼られたラベルが自己像をつくり、その自己像が、日々の小さなふるまいを選ばせていくために起こります。

こんにちは。恋愛心理研究家の関口美奈子です。
「あなたって、気がつく人だよね」。そう言われた翌日、いつもより少しだけ、周りをよく見ている自分がいた。そんな覚えは、ありませんか。
言葉は、その人を説明するために使われているようで、じつはその人をつくっていることがあります。これが「ラベリング効果」です。今日は、大切な人に貼るとよく効くラベルの話と、いつのまにか自分に貼ってしまっている、あまり良くないラベルの話を、両方お伝えします。

ラベリング効果とは

ラベリング効果とは、周囲から貼られた言葉のとおりに、その人の行動や性格が、あとから寄っていく心理です。もともとは社会学で、人が「問題のある人」と名づけられることで、本当にその役割を生きてしまう仕組みを説明する考え方として広まりました。

なぜ、そんなことが起きるのか。人は、自分についての説明を、思っているほど自分の内側から取り出していません。周囲がくれた言葉を集めて、自己像を組み立てているのです。「あなたは優しい」と言われ続けた人は、自分を優しい人だと理解し、優しくふるまう場面を、自分から少しずつ増やしていきます。ラベルが自己像になり、自己像が行動を選ぶ。この順番が、ラベリング効果の正体です。

人は、貼られた服のサイズに、身体を合わせていく

私はよく、ラベルを「言葉でできた服」だとお話しします。少し大きめの服を渡されると、人は不思議と、その服が似合うほうへ姿勢を正していく。反対に、窮屈な服ばかり着せられると、動きのほうが小さくなっていきます。

期待をかけられた人が伸びていくピグマリオン効果と、この効果はとても近い場所にあります。違いを一つ挙げるなら、期待は心のなかにあるもので、ラベルは口に出された、目に見える一言だということ。だからこそ、ラベルは扱いやすく、そして扱いを間違えたときの傷も、はっきり残ります。

効くラベルの貼り方:行動に貼り、人柄で結ぶ

では、実際にどう貼るか。ここには、はっきりしたコツがあります。先に具体的な行動を挙げて、最後を人柄の言葉で結ぶ。これだけです。

「優しいね」だけでは、相手は何を評価されたのか分からず、お世辞として受け流します。そこを、「さっき、私が寒そうにしてたの、気づいてくれたよね。そういうところが、優しいと思う」に変える。行動が先にあると、ラベルは根を持ちます。相手は、褒められた場面を思い出せるので、同じふるまいを繰り返しやすくなるのです。

もう一つ。まだ半分しか本当ではないラベルを、少し先に貼るのも、持てる人がよくやっていることです。「あなたって、決めるのが早いよね」と言われた人は、次の場面で、迷う時間を自分から短くしようとします。人は、貼られた言葉と自分のあいだにずれがあると、そのずれを埋めたくなる。ですから、ラベルは、その人の現在地より、ほんの少しだけ前に置くのが効きます。手が届かないほど遠くに置けば、それはただの皮肉になってしまいますが。

「どうせ私は」は、自分に貼った値札

ここからが、いちばんお伝えしたい話です。他人から貼られるラベルより、影響が大きいのは、自分で自分に貼るラベルのほうだからです。

「どうせ私は、人見知りだから」「どうせ私は、選ばれないほうだから」。こうした言葉を、謙虚さのつもりで口にしている方は、とても多い。けれどこれは謙虚さではなく、自分に値札を貼る行為です。値札を貼った以上、それより高い扱いを受けると、居心地が悪くなる。せっかく良い相手が現れても、無意識に距離を取ってしまいます。低い見方が人の力を削いでいくゴーレム効果は、他人からだけでなく、自分の口からも、静かに始まるのです。

剥がし方は、意外に単純です。性格の話を、行動の話に置き換える。「私は人見知りだ」ではなく、「初対面の、最初の数分が苦手だ」と言い直してみてください。性格はすぐには変えられませんが、最初の数分の準備なら、今日から変えられます。ラベルを力ずくで剥がそうとするより、範囲を狭めて、扱えるサイズにしてしまうほうが、身体は動きます。

まとめ:あなたの一言は、その人の自己紹介になる

ラベリング効果は、貼られた言葉に、人があとから自分を合わせていく心理でした。相手に贈るなら、行動を挙げてから人柄で結び、現在地より少し前に置く。自分に向けるなら、性格ではなく行動の言葉に言い換える。この二つを覚えておくだけで、日々の言葉づかいが、少し変わってくるはずです。

あなたが誰かに贈った一言は、その人が明日、自分を紹介するときの言葉になっているかもしれません。人を変えようとする必要は、ありません。ただ、その人のいちばん良いところを、正確な言葉にして返す。それだけで、人は自分から伸びていきます。
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よくある質問

ラベリング効果とは何ですか?
周囲から貼られた言葉のとおりに、その人の行動や性格が、あとから寄っていく心理です。「あなたは優しいね」と言われ続けた人が、優しくふるまう場面を自分で増やしていくように、ラベルが自己像になり、自己像が行動を選ばせていきます。
褒めるとき、どんなラベルの貼り方が効きますか?
その場で起きた具体的な行動を挙げてから、人柄の言葉で結ぶ貼り方が効きます。「気づいてくれたね、そういうところが優しい」のように、行動を先に置くと、相手は何を評価されたのかが分かり、同じふるまいを繰り返しやすくなります。行動のない褒め言葉だけだと、お世辞として受け流されがちです。
「どうせ私は」と自分にラベルを貼る癖は、どう外せばよいですか?
性格の話を、行動の話に置き換えるのが近道です。「私は人見知りだ」ではなく「初対面の最初の数分が苦手だ」と言い直すと、性格は変えられなくても、その数分の準備は変えられると分かります。ラベルを剥がそうとするより、範囲を狭めて、扱えるサイズにするほうが動きやすくなります。

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