社会・論考

マッチングアプリで
疲れるのはなぜか

関口美奈子

この記事の結論

マッチングアプリに疲れたのは、あなたの根気が足りないからではありません。候補が尽きない仕組みの中で、誰にも決め切れない状態が続く「選択の過積載」が、心をすり減らしています。出会いは、増やすほど選べなくなるのです。

  • 同時にやり取りする人数と、見る条件を絞る
  • やめる前に、期限を決めて休む。再開は目的と条件を決めてから
  • それでも消耗するなら、出会い方そのものを変える(紹介・結婚相談所など)

疲れのタイプ別セルフチェック、休み方と再開の仕方、やめ時のサイン、他の出会い方との比較表も後半にまとめています。

こんにちは。恋愛心理研究家の関口美奈子です。
スマホを開けば、ポケットの中に何百人もの「候補」がいる。人類の歴史で、これほど出会いに恵まれた時代はありません。
なのに、「いい人がいない」「もう疲れた」という声が、かつてないほど増えています。出会いの数は史上最多なのに、人はかつてないほど“選べない”でいる。この不思議な行き詰まりの正体が、「選択の過積載」です。

マッチングアプリは「出会いの数」を爆発させた

まず、明るい事実から。
マッチングアプリは、出会いのかたちを大きく変えました。職場や友人の紹介に頼らなくても、自分のペースで人と知り合える。リクルート ブライダル総研の調査でも、いまや結婚のきっかけとして、ネット系の婚活サービス・アプリは最上位の一つに並ぶまでになりました。

道具としては、本当によくできています。出会いの「入口」を、これほど広げた発明はありません。問題は、入口が広がったその先で、私たちの心に起きていることなんですね。

なぜ、数が増えると「選べなく」なるのか

ここで、ひとつの有名な実験をご紹介します。
スーパーでジャムを売るとき、24種類を並べた日と、6種類だけ並べた日を比べたところ、たくさん並べた日のほうがお客さんは足を止めたのに、実際に「買った」人は、種類が少ない日のほうがずっと多かったのです。

選択肢が多すぎると、人は迷い、比べ疲れ、最後には「選ばない」を選んでしまう。心理学ではこれを「選択のパラドックス」と呼びます。
マッチングアプリで起きているのは、まさにこれの恋愛版です。次から次へと現れる候補。スワイプすればまた次。「もっといい人がいるかも」が無限に続き、決められないまま消耗していく。これが「選択の過積載」の正体です。荷物を積みすぎた船が、かえって前に進めなくなるように、です。

スワイプは、人を「品定めモード」にする

さらに、もう一つの作用があります。
顔写真を一秒で左右に振り分ける。あの動作を繰り返すうちに、私たちは知らず知らず、人を「条件で値踏みする目」で見るようになっていきます。

身長、年収、見た目、肩書き。スペックの一覧で人を比べる癖がつくと、目の前の相手の中にある“縁”の温度が、だんだん感じ取れなくなる。
以前のコラムで、人間関係が値踏みの対象になっていく流れを「縁の市場化」として書きました。アプリ疲れは、その市場化が私たち自身のまなざしにまで及んだ姿なんですね。相手を品定めしているつもりが、いつのまにか自分の心まで、すり減らしている。

これは「意志の弱さ」ではなく、仕組みの問題

ですから、これだけはお伝えしたいんです。
アプリで疲れてしまうのは、あなたの根気が足りないからでも、選り好みが激しいからでもありません。

考えてみてください。多くのアプリは、あなたが“すぐに”理想の相手と結ばれて卒業してしまっては、商売になりません。使い続けてもらうことで成り立つ仕組みです。だから候補は尽きないように設計され、「もっといい人がいるかも」という気持ちは、そっと煽られ続ける。
つまり、選択の過積載は、あなたの性格の問題ではなく、「選ばせ切らない」ことで利益が出る構造が生んでいる面が大きいんです。仕組みの上で疲れているのに、それを自分の欠点だと思い込まないでください。

「選択の過積載」から、降りる

では、どうすればいいのでしょう。私は、二つの方向をお勧めしています。

ひとつは、一人ひとりの工夫です。
大切なのは、「最高の一人」を探すのをやめ、「十分に良い相手」を選び切ること。心理学では、すべてを比べ尽くそうとする人より、自分の基準を満たしたら決められる人のほうが、結果的に幸福度が高いと分かっています。
候補を無限に広げるのではなく、会う人数も、見る条件も、あえて絞る。そして一度会うと決めたら、画面の中で比べるのをやめて、目の前のその人と向き合う。選択肢を減らす勇気こそ、過積載を解く鍵なんですね。

もうひとつは、社会の側への問いです。
これだけ多くの人が出会いをアプリに頼る時代になった以上、その設計が私たちの心や、社会の少子化にどう影響しているかは、もう個人だけの話ではありません。「人を使い続けさせる」ことではなく「人がちゃんと結ばれる」ことに報いる仕組みへ。プラットフォームのあり方を社会として問うていくことも、これからの立派なテーマだと思います。
出会いの入口は、もう十分に広がりました。次に私たちに必要なのは、たくさんの中から一つを選び、そこに腰を据える力なのかもしれませんね。

あなたの疲れはどれ? マッチングアプリ疲れのセルフチェック

ひとくちに「アプリ疲れ」と言っても、疲れている場所は人によって違います。次のうち、当てはまるものを数えてみてください。

  • たくさん見ているのに、誰にも「会いたい」と思えない
  • 「もっといい人がいるかも」と思って、今の相手に決め切れない
  • 同時に何人ともやり取りしていて、誰に何を話したか分からなくなる
  • いいねや返信が来ないたびに、自分を否定された気持ちになる
  • 会う約束の前にやり取りが途切れることが続いている
  • 相手が本気なのか、遊びなのかを見極めることに疲れている
  • 気づくと、相手の減点ばかり探している
  • アプリを開くこと自体が、おっくうになっている

当てはまった項目で分かる、疲れの5タイプ

  • 比べ疲れ(上の1〜2つめ):まさに選択の過積載です。見る人数と条件を減らすことが、いちばん効きます。
  • やり取り疲れ(3つめ):同時進行の人数に上限を決めましょう。二、三人までに絞るだけで、一人ひとりへの集中が戻ります。
  • 空振り疲れ(4〜5つめ):反応がないのは、あなたの価値の否定ではありません。写真や自己紹介、最初の一通を見直すと流れが変わることがあります。
  • 見極め疲れ(6つめ):真剣度を自分ひとりで判定し続けることが負担です。結婚への本気度が出会う前に確認できる場を併用する手もあります。
  • 燃え尽き(7〜8つめ):工夫より先に、休むことが必要なサインです。次の章の休み方から始めてください。

相談の現場では、男性は「反応が来ない」空振り疲れ、女性は「届く数が多すぎて見極められない」比べ疲れ・見極め疲れを訴える方が目立ちます。疲れる場所が逆でも、根っこは同じ。自分ひとりで、無限の候補を裁き続けていることです。

疲れたときの休み方:やめる前に「休む」を設計する

疲れたとき、いちばんもったいないのは、なんとなく開かなくなって、なんとなく婚活そのものから遠ざかってしまうことです。休むのは撤退ではありません。選ぶ力を充電する時間です。だからこそ、休み方にも設計が要ります。

  • 休む期限を先に決める。「二週間」「今月いっぱい」など、終わりを決めてから休みます。期限のない休みは、再開のきっかけを失いがちです。
  • 通知を切り、ホーム画面から外す。目に入る場所にあると、休んでいても頭は休まりません。
  • やり取り中の相手には、ひとこと伝える。黙って消えるより、「少しお休みします」と区切るほうが、自分の心も軽くなります。
  • 休みの間は、自分の生活を満たす。好きな店に行く、友人と会う、体を動かす。満たされた人のほうが、相手を減点ではなく加点で見られます。

婚活全体に疲れを感じている方は、婚活に疲れたときで、休む期間の考え方をさらに詳しくまとめています。忙しくて疲れる時間そのものが取れない方は、忙しい人の婚活で、探す・選ぶ・調整するという準備の負担を手放す考え方をまとめています。

再開するときの3つのルール

休んだあとに同じやり方で戻れば、同じ疲れが待っています。再開するときは、次の三つを先に決めてください。

  • 目的と、譲れない条件を三つだけ書き出す。条件は増やすほど、比べる材料が増えて選べなくなります。
  • 同時にやり取りする人数の上限を決める。上限に達したら、新しい人を探すのではなく、今の相手と向き合います。
  • アプリを開く時間を決める。一日に一度、決まった時間だけ。すき間時間にスワイプする習慣が、過積載を生みます。

やめ時のサイン

次のような状態が続いているなら、使い方の工夫より、一度アプリから離れる時期です。

  • 相手の良いところより、欠点を探すほうが早くなっている
  • 会う前から、もう疲れている
  • アプリを開くと気分が沈み、それが一日に響く
  • 休んで再開しても、同じ疲れがすぐに戻ってくる

気分の落ち込みや眠れない状態が長く続いているときは、婚活より先に、心と体を休めることを優先してください。つらさが続くなら、ひとりで抱えず、信頼できる人や相談窓口に話すことも大切です。

婚活は「伴走型」へ還ってきている

アプリ疲れの反動として、いま婚活サービスの側にも変化が起きています。AIが相性を見立てて会う相手を絞ってくれる型や、担当者が間に入ってやり取りを整えてくれる型。自分で無限の候補を裁かなくていい出会い方が、少しずつ増えてきました。

この動きを眺めていて、私はふと思うんです。相手の人柄を見て、釣り合いを考え、間を取り持ち、迷ったときに背中を押す。それは、昔の仲人がずっとやってきたことそのものではないか、と。

地域や親戚が縁を運んでくれた時代には、出会いには必ず誰かが伴走していました。その装置が外れ、一人で出会いの市場に立つ「単独婚」が当たり前になり、その重さに疲れた人たちが、いま新しい道具を使って、横に誰かがつく「伴走婚」へ戻ろうとしている。進化の矢印はまっすぐ前ではなく、らせんを描いて、古い知恵の隣へ帰ってくるものなのかもしれませんね。

相談の現場で長く見てきて感じるのは、ご縁をつかむのが上手な人ほど、早い段階で消耗戦から降りているということです。百人とやり取りを続けるより、信頼できる伴走者を一人持ち、確かな相手と深く向き合う。エネルギーを選別ではなく、関係を育てるほうに使う。だから疲れにくく、進みも早いんです。

伴走者は、結婚相談所の担当者でも、信頼できる友人の紹介でもかまいません。大切なのは、一人で抱え込むのをやめるという一点です。疲れているのは、あなたの魅力が足りないからではなく、一人きりで走る戦い方を続けてきたから。丸腰で最前線に立ち続ける必要は、どこにもありません。

アプリ以外の出会い方と比べてみる

アプリをやめることは、出会いをあきらめることではありません。選択の過積載が起きにくい出会い方に、乗り換えるという選択肢があります。どれが優れているかではなく、「誰が絞ってくれるのか」「いつまでに決めるのか」という仕組みの違いで見てください。

項目 マッチングアプリ 結婚相談所 友人・知人の紹介 趣味・社会人の集まり
出会える人数多い。自分で探し、自分で絞る紹介される・申し込む形で、一度に会う人数は限られる少ない。紹介してくれる人しだい少ない。同じ場に通う人に限られる
相手の結婚への本気度プロフィールとやり取りから自分で見極める入会時に独身証明書などの提出が必要(IBJの場合)。出会う前に確認が済んでいる紹介者を通じてある程度わかる結婚を目的に集まった場ではないため、会ってから確かめる
「選び切る」負担大きい。候補が尽きず、決める期限もない小さめ。交際の期間に目安があり、担当者と一緒に決める小さい。比べる相手がそもそも少ない小さい。ただし恋愛に進むまで時間がかかりやすい
向いている人自分のペースで広く出会いたい人結婚を前提に、期限を決めて一人と向き合いたい人信頼できる紹介者がいる人共通の趣味からゆっくり関係を育てたい人

選択の過積載という視点で見ると、違いは「数」と「期限」を誰が決めるかです。アプリは、その両方を自分で決めなければなりません。IBJの結婚相談所では、入会時に独身証明書などの提出が必要で(出典:IBJ「結婚相談所の入会審査とは?」)、交際期間もお見合い日から3ヵ月が目安と決められています(出典:IBJ「ルール&マナー」)。つまり、見極めと期限の一部を、最初から仕組みが引き受けてくれるのです。両者の違いは、結婚相談所とマッチングアプリの違いで詳しく比べています。

出典:リクルート ブライダル総研「婚活実態調査」(結婚のきっかけ)、Sheena Iyengar & Mark Lepper(2000)ジャムの選択実験、Barry Schwartz『The Paradox of Choice(選択の科学/なぜ選ぶたびに後悔するのか)』。

このテーマは、YouTube「モテ男TV」でも動画で発信しています。
恋愛・結婚・男磨きのヒントを、動画でものぞいてみませんか。

▶ モテ男TV(YouTube)を見る

よくある質問

マッチングアプリで疲れるのはなぜですか?
出会いの数が爆発的に増え「選択の過積載」に陥るからです。選択肢が多すぎると人はかえって選べなくなり、決めきれない疲労だけが積もっていきます。
選択肢が多いのに選べなくなるのはなぜ?
スワイプが人を「品定めモード」にするからです。次にもっと良い人がいるかもと感じ、目の前の縁を確定できない。これは意志の弱さではなく、仕組みが生む現象です。
マッチングアプリ疲れから抜け出すには?
「選択の過積載」から降りることです。同時に多くを比較せず、相手の数を絞り、品定めではなく一人と向き合う。条件の最適化をやめると、疲れは和らぎます。
マッチングアプリに疲れたら、どのくらい休めばいいですか?
決まった正解はありませんが、「いつまで休むか」を先に決めてから休むのがおすすめです。期限を決めずにやめると、再開のきっかけを失いがちです。休む間は通知を切り、再開するときは目的と譲れない条件を三つに絞ってから始めると、同じ疲れを繰り返しにくくなります。
マッチングアプリをやめたほうがいいサインはありますか?
相手の欠点ばかり探している、会う前から疲れている、アプリを開くと気分が沈む。こうした状態が続くなら、使い方を工夫するより一度離れる時期です。気分の落ち込みや眠れない状態が長く続くときは、婚活より先に心と体を休めることを優先してください。
マッチングアプリに疲れたら、次はどんな出会い方がありますか?
友人・知人の紹介、趣味や社会人の集まり、結婚相談所などがあります。選択の過積載に疲れた人には、会う人数と決める期限があらかじめ区切られている出会い方が向いています。IBJの結婚相談所では独身証明書などの確認が出会う前に済んでいるため、相手の本気度を見極める負担も軽くなります。

関連ページ

30代の婚活(エースブライダル) 新宿の結婚相談所(エースブライダル) マッチングアプリから結婚相談所へ(エースブライダル) 恋愛婚活プログラム Winsome ← コラム一覧 結婚相談所とマッチングアプリの違い 婚活に疲れたとき 忙しい人の婚活 日本社会はなぜ孤独化したのか 海外の恋愛・結婚はどこへ向かうのか