海外の恋愛・結婚は
どこへ向かうのか

関口美奈子

こんにちは。関口美奈子です。
世界の若い人たちが、恋愛や結婚から「降り」はじめている——そんなニュースを見ると、人が冷たくなったのかと感じますよね。
でも、違うんです。彼らは愛さなくなったのではありません。親密な関係を持つ「値段」が高くなりすぎて、買えなくなっただけ。私はこれを「親密さのインフレ」と呼んでいます。

世界で進む、関係からの「静かな撤退」

いま、海外の恋愛トレンドを象徴する言葉があります。

欧米のZ世代に広がる「situationship(シチュエーションシップ)」
これは「付き合っているような、いないような」、あえてラベルを付けない関係のこと。傷つきたくない、縛られたくない、だから関係を“定義しない”という選択です。

もっと極端なのが、韓国で生まれた「4B運動」
恋愛しない、性的関係を持たない、結婚しない、子どもを産まない——この4つの「ノー」を掲げる動きです。韓国の合計特殊出生率は2024年で0.75と、世界でもっとも低い水準にあります(その後わずかに回復の兆しも見えています)。

でも、本当は「愛したくない」わけではない

ここが面白いところなんです。

situationshipを選ぶ若者たちに調査をすると、多くが「本当はちゃんとした関係や結婚を望んでいる」と答えます。
望んでいるのに、踏み込めない。求めているのに、降りてしまう。
この矛盾こそが、いまの世界の恋愛の本音なんですよね。

私はこれを「親密さのインフレ」と呼んでいます

では、なぜ望んでいるのに買えないのか。値段が上がっているからです。

誰かと深くつながるには、時間も、お金も、心の体力もかかります。
ところが、将来への経済不安、長時間労働、SNSで他人とくらべてしまう日々——こうした中で、親密さのコストはどんどん高騰しています。
おまけにマッチングアプリは「もっといい人がいるかも」と、選択肢を無限に見せてくる。決めることのコストまで上がってしまうんですね。

つまり、親密な関係という“商品”の値段が上がりすぎて、多くの人が手を出せなくなっている。これが「親密さのインフレ」です。
以前お話しした「縁の市場化」が、世界規模で進んでいる、と言ってもいいかもしれません。

日本も、同じ通貨で動いている

これは決して、海外だけの話ではありません。

日本の未婚化や少子化も、根っこは同じ。
「結婚しないなんて、わがままだ」と個人を責める声がありますが、世界中で同時に同じことが起きているなら、それはもう個人の問題ではなく、先進国が共通して抱える構造の問題です。
あなたの国が、あなたの世代が特別ダメなのではないんですよ。

インフレの時代に、どう愛するか

では、どうすればいいのか。私はやはり、二つの方向があると思います。

一つは、個人として「コストを下げる」こと。
完璧な関係を一気に作ろうとせず、小さく始める。相手に求める前に、先に与える。その「持てる人」の心の余裕が、親密さの値段を、自分の側からそっと下げてくれます。

もう一つは、社会の側の話。
若者の経済不安や時間の貧しさを放っておいたまま、「もっと産め、もっと結婚しろ」と言っても、インフレは止まりません。
人が安心して誰かとつながれる余白を、政治や社会がどう用意するか。海外のトレンドは、私たち自身の課題を映す鏡なんだと思います。

出典:韓国統計庁(2024年 合計特殊出生率0.75)、ジェトロ・各種報道、欧米メディアによるZ世代の交際傾向(situationship)に関する報道をもとに構成。
個人の側からの婚活の考え方は婚活がうまくいく人の心理学もどうぞ。

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