心理学

ヴェブレン
効果とは

関口美奈子

ヴェブレン効果とは、価格が高いこと自体が魅力になり、高価であるほど欲しくなるという消費心理です。品物の使い心地よりも、それを持っていると人から見られることに価値が生まれるために起こります。

こんにちは。恋愛心理研究家の関口美奈子です。
同じ質の鞄が二つ並んでいて、片方には手の届く値段、もう片方には目を見張る値段がついている。安いほうで用は足りると分かっているのに、心が動くのは高いほうだった。そんな経験は、ありませんか。
これを、「ヴェブレン効果」と呼びます。そして私がお伝えしたいのは、鞄の話ではありません。この心理は、人が人を選ぶ場面にも、そのまま持ち込まれているのです。今日は、値札と魅力の、少し居心地の悪い関係を見ていきます。

ヴェブレン効果とは

ヴェブレン効果とは、高いという事実そのものが、欲しさの理由になるという心理です。ふつう、値段が上がれば買う人は減ります。ところが一部の品では、値段が上がったことで、かえって欲しがる人が増えます。安売りをした途端に、ぱたりと売れなくなる商品があるのは、このためです。

なぜ、そんな逆転が起きるのか。買っているのが、品物ではなく「持っている自分がどう見えるか」だからです。高価なものを身につけている人には、それを買える力があるという説明が、言葉なしでついてまわります。だから値札は、財布のためだけでなく、他人の目のために存在している。ヴェブレン効果とは、平たく言えば、見せるために払うという心理なのです。

婚活が「スペック展示会」になるとき

さて、ここからが本題です。人を選ぶ場面でも、まったく同じことが起きています。私はこれを、「スペック展示会」と呼んでいます。

年収、学歴、勤務先、住んでいる街。これらは、その人を知るための手がかりの一つに過ぎません。けれど、数字や固有名詞になっている分、一瞬で比べられてしまう。相手の優しさや、機嫌の直り方や、困っている人への態度を知るには、何度も会う必要があります。ところが条件なら、プロフィールを一枚めくれば順位がつく。この手軽さが、条件を価格札に変えてしまうのです。

そして展示会が始まると、参加者はこう考えます。「もっと高い札を掲げなければ、選ばれない」。年収を上げ、肩書きを整え、持ち物を格上げする。努力そのものは立派です。けれど、札を磨く競争に入った瞬間、その人は「比較される側」に自分を置いてしまう。ここが、いちばんの落とし穴です。

スノッブ効果・希少性との、線の引き方

混同されやすい言葉が二つあるので、ここで整理しておきますね。

スノッブ効果は、人と同じでは嫌だという心理です。求めているのは高さではなく、違いのほう。みんなが持ち始めた瞬間に、価値が落ちてしまいます。一方ヴェブレン効果が求めるのは、誰の目にも分かる高さです。見せたいものが「違い」なのか「格」なのか、という差だとお考えください。

そして希少性の原理は、数が少ないものほど価値が高く見える、という別の働きです。ヴェブレン効果は値段が、希少性の原理は数が、心を動かしている。三つとも、中身を確かめる前に価値の判定を済ませてしまうという点では、同じ家族の心理だと言えます。

値札は、あなたの代わりに語ってはくれない

私が長く見てきて確かに言えるのは、札で選ばれた関係は、札で比べられ続けるということです。高さで選ばれたなら、より高い札が現れたときに、比較の土俵から降りられません。条件は、いつか変わります。会社は変わり、体力は変わり、役職も変わる。変わるものの上に、変わらない関係を建てるのは、なかなか難儀なことなのです。

では、どうするか。答えは、値札を捨てることではありません。値札の横に、値札では書けないものを置くことです。

その人といると考えがまとまる。負けたときの態度がきれいだ。約束の守り方に品がある。こういうものは、プロフィール欄に書けません。書けないから、比べられない。比べられないものだけが、あなたを唯一にします。持てる人が持っているのは、たいてい、この書けないほうの資産です。

具体的な一歩を挙げるなら、自己紹介を条件から始めるのをやめてみることです。何をしてきたかの前に、何を面白がる人なのかを語る。相手に対しても、条件表を読み上げる代わりに、その人が何に時間を使っているかを尋ねてみる。展示会から降りる方法は、案外、会話の順番を変えるくらいのところにあります。

まとめ:価格ではなく、価値で選ばれる

ヴェブレン効果は、高いこと自体が魅力になり、高価なほど欲しくなる消費心理でした。そしてこの心理は、婚活や恋愛の場でも、条件という価格札の形で働いています。

札を磨く努力を否定はしません。けれど、札の高さで勝ち続ける人生は、休む場所がありません。あなたを選んでほしいのは、あなたの値段に惹かれた人ではなく、値札の書けない部分に惹かれた人のはずです。比べられない何かを一つ育てること。それが、長く続く関係へのいちばんの近道だと、私は思っています。
こうした心理学を、人間関係やコミュニケーションに活かすお話は、講演でもお伝えしています。ご関心のある方は、よければお気軽にご相談ください。

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よくある質問

ヴェブレン効果とは何ですか?
ヴェブレン効果とは、価格が高いこと自体が魅力になり、高価であるほど欲しくなるという消費心理です。品物の使い心地よりも、それを持っていると人から見られることに価値が生まれるために起こります。
ヴェブレン効果とスノッブ効果は、どう違いますか?
求めているものが違います。ヴェブレン効果は、高い価格そのものが魅力になり、その高さを人に見せたいという心理です。スノッブ効果は、人と同じでは嫌だという心理で、価格よりも希少さや個性のほうに価値を置きます。見せたいのが「格」なのか「違い」なのか、という差だとお考えください。
婚活でスペックを気にしすぎるのは、なぜですか?
年収や学歴、勤務先といった条件は、数字や名前で比べられるため、価格札と同じ働きをするからです。相手の中身を知るには時間がかかりますが、条件なら一瞬で優劣がつきます。その手軽さゆえに、本来は判断材料の一つでしかない条件が、その人の価値そのもののように扱われてしまいます。

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