遠距離の二人は、触れるふりで距離を埋めていた
触れられない恋人たちは、触れるふりで距離を埋めていた。
この研究でわかったこと
遠距離の恋人たちは、ビデオ通話で投げキスをするような「ふりの接触」や、「ハグしたいな」とメッセージで伝える「言葉の接触」を使っていて、それを距離の埋め合わせになると感じていました。こうした行動を使いやすいのは、ほかの愛情表現もよく使う人で、使いにくいのは回避型の愛着の人でした。さらに、これらの行動は関係の質と関連していて、その結びつきは愛着の回避が高い人ほど強い可能性を示す、予備的な結果も出ています。遠距離ではよく見られる行動で、役に立つ可能性があるというのがこの研究の見立てです。
- 論文
- 「あなたの愛を感じられる」:遠距離恋愛で愛情のこもった触れ合いに近づける行動
- 掲載誌・公開
- Journal of Social and Personal Relationships(2026-08-25)
- 方法
- 遠距離恋愛のパートナーが使う、触れ合いに近い行動と、関係の質との関連を調べた研究
- 原典
- https://doi.org/10.1177/02654075261481218
関口美奈子の読み方
遠距離というと、「会えない時間が愛を試す」と語られがちです。でもこの研究が見ているのは、試される側ではなく、工夫する側でした。触れられないなら愛情は届かない、ではなく、触れるふりと言葉で、ぬくもりの代役を立てている人たちがいる。そこが面白いところです。
ビデオ越しの投げキスは、正直ちょっと照れますよね。でも、照れを越えて身ぶりを画面に持ち込める人は、「あなたに触れたい気持ちがある」と先に差し出していることになります。「ハグしたいな」の一行も同じで、持てる人は愛情を、受け取りやすい形に訳してから渡します。私はここに、距離の翻訳力が出ると見ています。
もうひとつ気になるのは、回避型の愛着の人ほど使いにくい一方で、使っている人では関係の質との結びつきが強い可能性がある、という点です。近づかれるのが少し苦手な人にとって、言葉や身ぶりという間接的な経路は、安全な入り口なのかもしれません。ただし予備的な結果ですので、断定はしません。
これから結婚を考える人にとって、転勤や仕事で離れる時期は、誰にでも起こりうる話です。そのとき、距離そのものより、ぬくもりの代役を用意できるかどうかが、二人の安心感とつながっているかもしれません。会える近さだけでなく、離れても温度を渡せる人かどうかも、相手選びの静かな物差しになります。
明日からの一手
- ビデオ通話の終わりに、画面越しの投げキスやハグのしぐさを一度だけ試してみる。照れ笑いも含めて、ふたりの合図になります。
- メッセージに「今ハグしたいな」と、触れたい気持ちを一行足してみる。会えない日の温度を、言葉で渡す練習になります。
- 相手が照れ屋なら、求めずに自分から先に出してみる。返し方は人それぞれなので、相手なりの形を待つくらいの余裕を持ちましょう。
遠距離の恋人を対象にした研究で、触れ合いの代わりの行動と関係の質が同時に見られたという関連の話です。行動が関係を良くしたと言える結果ではなく、回避傾向との結びつきも予備的な段階です。
知識は、使う場所があって初めて効く
恋愛相談、婚活相談はこちらからほかの研究ノート
トーク履歴の削除は、隠すためだけではなかった
交際中の相手とのメッセージを残す理由と消す理由を、30人へのインタビューで探った研究です。消す行為は感情の調整や衝突対処にも使われ、一方で関係に不確かさも生んでいました。婚活中の連絡の扱い方にも通じます。
お金の話は、回数を増やしても仲は深まらなかった
カップル136組をひと月追った研究で、関係の満足度と結びついていたのはお金の話の回数ではなく質でした。質の高いお金の会話は自分と相手の満足度に関連し、回数には同じ効果が見られませんでした。結婚前の話し方に翻訳します。
夫婦の幸せは、ずっと連動し続けるわけではなかった
中国の夫婦6915組を2014年から2022年まで追った研究で、夫と妻の結婚満足度はそろいやすい一方、互いへの影響は時間とともに非対称になり、都市と農村でも違いがありました。世界の結婚観として読み解きます。