アドラー心理学
「課題の分離」とは

関口美奈子

こんにちは。関口美奈子です。
「あの人にどう思われているか気になる」「家族が思うように動いてくれない」。人間関係の悩みは、尽きませんよね。
そんな悩みを、驚くほど軽くしてくれる考え方があります。アドラー心理学の「課題の分離」です。じつは、人間関係の悩みの多くは、「他人の課題」に踏み込むことから生まれている。今日は、この考え方をわかりやすく解説します。

アドラー心理学と「課題の分離」とは

アドラー心理学とは、精神科医アルフレッド・アドラーが築いた心理学で、ベストセラー『嫌われる勇気』でも広く知られるようになりました。その中心的な考え方のひとつが、「課題の分離」です。

課題の分離とは、ある事柄について「これは、誰の課題か」を考え、自分の課題と他人の課題を、はっきり切り分けることです。見分け方はシンプル。「その選択の結末を、最終的に引き受けるのは誰か」を問えばいい。たとえば、あなたが誠実に接したうえで、相手があなたを好きになるかどうか——それは、相手の課題であって、あなたがコントロールできるものではないんですね。

なぜ、悩みが軽くなるのか

では、なぜ課題を分けると、心が軽くなるのでしょう。理由は、私たちの悩みの多くが、「自分ではどうにもできない他人の課題」を、なんとかしようともがくことから生まれているからです。

相手の気持ち、相手の評価、相手の行動。これらは、本来あなたにはコントロールできません。なのに、それを変えようとしたり、思い通りにならず落ち込んだりして、苦しむ。
課題を分離すると、「ここまでは自分の課題、ここから先は相手の課題」という線が引けます。すると、抱えなくていい荷物を下ろせて、心がふっと軽くなる。自分にできることに集中し、相手に委ねることは手放す。これが、悩みを減らす鍵なんですね。

人間関係での活かし方

この課題の分離は、あらゆる人間関係に活かせます。

1.他人の評価に、振り回されない。あなたをどう評価するかは、相手の課題。あなたは、自分が誠実でいることに集中すればいい。
2.家族を、変えようとしない。相手の人生をどう生きるかは、相手の課題。心配でも、最後は本人に委ねる。
3.恋愛で、見返りを求めすぎない。あなたが与えること(自分の課題)と、相手が応えるか(相手の課題)を、分けて考える。
以前「人間関係に疲れたとき」「苦手な人との付き合い方」でお話しした「それは誰の課題か」も、まさにこの考え方なんですね。

注意点:突き放すことではない

ここで、大切な誤解を解いておきます。課題の分離は、「他人に無関心になる」「冷たく突き放す」ことではありません

相手の課題に土足で踏み込まない、というだけで、無関心になるわけではない。むしろ、相手の領域を尊重したうえで、信頼して見守り、求められたら手を貸す。これが本来の姿です。子どもの宿題を無理やりやらせるのではなく、「いつでも手伝うよ」と信じて待つ。相手の課題を尊重することは、冷たさではなく、対等な敬意のあらわれなんですね。先に信じて与えられる「持てる人」の関わり方と、深くつながっています。

まとめ:線を引くと、優しくなれる

課題の分離が教えてくれるのは、自分と他人のあいだに、健やかな線を引くことの大切さです。

線を引くと、抱えすぎていた荷物が下り、心に余裕が生まれます。そして不思議なことに、余裕ができると、人にもっと優しくなれる。相手をコントロールしようとせず、信頼して見守れるようになる。
人間関係の悩みで苦しくなったら、一度、問うてみてください。「これは、誰の課題だろう」と。その一問が、あなたの心を軽くし、人との関係を、もっと健やかなものに変えてくれますよ。

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