心理学

ジャムの法則
とは

関口美奈子

ジャムの法則とは、選択肢が多すぎると、人はかえって選べなくなり、決断そのものを先延ばしにしてしまうという心理効果です。選べる自由が増えるほど、比べる負担と、選ばなかったものへの未練が大きくなり、決める力が削られていきます。

こんにちは。恋愛心理研究家の関口美奈子です。
色とりどりの瓶がずらりと並んだ売り場の前で、あれこれ手に取ったあげく、結局、何も買わずに立ち去った。そんな経験は、ありませんか。選べる数が増えたはずなのに、なぜか気持ちは晴れない。これが「ジャムの法則」と呼ばれる、選択にまつわる心理です。
今日は、この法則の仕組みと、婚活や恋愛で「決められない」が起きる理由、そしてそこから抜け出す考え方を、お話しします。

ジャムの法則とは

ジャムの法則とは、選択肢が多すぎると、人はかえって選べなくなり、決断を先延ばしにしてしまうという心理効果です。食品売り場で、たくさんの種類を並べた棚と、数種類に絞った棚を比べた有名な実験にちなんで、この名前で呼ばれています。心理学では「選択過多」とも言われます。

面白いのは、たくさん並んだ棚のほうが、人は足を止めて、楽しそうに眺めるということ。けれど、いざ「どれかひとつを持って帰る」となると、手が止まってしまうのです。見るのは、多いほうが楽しい。決めるのは、少ないほうが楽。この二つは、まったく別のことなんですね。

「もっといい人がいるかも」が、決断を溶かす

この法則がいちばん切実に効いてくるのが、婚活の場面だと、私は感じています。

スマホを開けば、次から次へと新しい候補が現れます。会ってみて、悪くない。話も合う。それなのに、家に帰ってアプリを開くと、「もっといい人がいるかもしれない」という声が、心のどこかで鳴る。そして、返信の手が止まる。この繰り返しで、気づけば、誰とも深くならないまま季節が変わっていた。そんな話を、私は数えきれないほど聞いてきました。

これは、目の前の人の魅力が足りないから起きているのではありません。比べる相手が、無限に補充され続けるから起きています。選択肢が尽きない場所では、決断は、いつでも先延ばしにできてしまう。むしろ、決めないことが、いちばん賢い振る舞いに見えてしまうのです。この疲れの正体については、マッチングアプリで疲れるのはなぜかのコラムでも、詳しくお話ししています。

選べないのは、意志の弱さではありません

ここで、はっきりお伝えしておきたいことがあります。決められないのは、あなたの覚悟が足りないからではありません。仕組みの問題です。

選択肢がふたつなら、比べる組み合わせはひとつ。けれど選択肢が十を超えると、比べる組み合わせは、頭の中で一気に膨れ上がります。そのうえ、ひとつを選ぶということは、ほかのすべてを手放すということ。人は、まだ起きていない後悔を、先に想像してしまう生きものです。だから、「まだ決めない」という選択が、いちばん安全に見える

さらに厄介なのは、並べ方ひとつで、私たちの「好み」まで作られてしまうこと。比較の材料が増えるほど、判断は、自分の心よりも並びの都合に引っ張られていきます。この仕組みについては、おとり効果(デコイ効果)のコラムで解説していますので、あわせて読んでみてください。

持てる人は、選択肢を「減らす勇気」を持っている

では、決められる人は、何が違うのか。私が見てきたかぎり、答えはひとつです。持てる人は、選択肢を増やすのではなく、自分から減らしている

条件表を細かくして、当てはまる人を探し続ける。これは一見、慎重で誠実な態度に見えます。けれど実際には、条件を足すほど、比べる軸が増え、決断は遠のいていきます。私はこれを、「保留グセ」と呼んでいます。選ばないでいる状態は、傷つかずに済むぶん、居心地がいい。だからこそ、抜け出すには意識が要るのです。

おすすめは、三つ。ひとつ、同時にやり取りする人数を、自分で決めて絞ること。ふたつ、外せない条件を、ふたつ三つだけに決めておくこと。あとは「あったらうれしい」の欄に移します。三つ、迷ったら、頭の中で比べずに、会って確かめること。情報を並べている時間より、実際に向き合った数分のほうが、はるかに多くを教えてくれます。

まとめ:選択肢を絞ることが、決断力です

ジャムの法則は、選べる数が増えるほど、人はかえって選べなくなるという心理でした。婚活で「もっといい人がいるかも」が消えないのは、あなたの心が移り気だからではなく、候補が無限に補充される場所に立っているからです。

決断力とは、たくさんの中から最高の一つを見抜く力のことではありません。自分の手で選択肢を減らし、選んだものを育てていく力のことです。選ばなかった道を惜しむ気持ちは、誰にでもあります。それでも、ひとつに手を伸ばした人だけが、その先の景色を見られる。選択肢を絞ることは、視野を狭めることではなく、目の前の人をちゃんと見るための、余白を作ることなのだと思います。
こうした心理学を、意思決定やコミュニケーションに活かすお話は、講演でもお伝えしています。ご関心のある方は、よければお気軽にご相談ください。

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よくある質問

ジャムの法則とは何ですか?
選択肢が多すぎると、人はかえって選べなくなり、決断そのものを先延ばしにしてしまうという心理効果です。選べる自由が増えるほど、比べる負担と、選ばなかったものへの未練が大きくなり、決める力が削られていきます。「選択過多」とも呼ばれます。
なぜ選択肢が多いと、選べなくなるのですか?
比べる作業に、頭の力を使い果たしてしまうからです。選択肢が増えるほど、比べる組み合わせは膨らみます。さらに、ひとつを選ぶことは、ほかのすべてを手放すことでもあるため、選んだあとの後悔を先に想像してしまい、決断を保留するほうが楽に感じられるのです。
マッチングアプリで相手を決められないときは、どうすればいいですか?
選択肢の数そのものを、意識して減らすことをおすすめします。同時にやり取りする人数を絞る、自分にとって外せない条件をふたつ三つに決めておく、迷ったら会って確かめる。条件を足すのではなく引くことで、比べる負担が軽くなり、目の前の人を見る余裕が戻ってきます。

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