恋愛・結婚

恋愛から始めない婚活とは
「好き」を入口にしない結婚の合理性

関口美奈子

こんにちは。恋愛心理研究家の関口美奈子です。
最近、婚活の世界で「恋愛から始めない婚活」という考え方がよく語られるようになりました。恋愛感情の盛り上がりを関係の入口にせず、価値観の相性や生活の相性から関係を始めて、恋愛感情は一緒に過ごすなかで後から育てていく。そういう結婚観です。
「好きでもない人と結婚するの?」と眉をひそめる人もいるかもしれません。けれど、結婚相談所を運営し、のべ3万人以上の男女と向き合ってきた私から見ると、これは恋愛を諦める話ではありません。恋愛が育つ順番を入れ替える、きわめて合理的な話です。順番を変えただけで結婚がうまくいき、しかも後からちゃんと恋が始まる。そんな景色を、私は現場で何度も見てきました。

恋愛から始めない婚活とは:なぜ今、語られるようになったのか

恋愛から始めない婚活とは、「ときめいたから会う」のではなく、「この人となら暮らせそうだから会い続ける」を出発点にする婚活のスタイルを指す言葉として使われています。ドキドキするかどうかで相手をふるいにかけるのをやめて、金銭感覚、休日の過ごし方、仕事への姿勢、人への接し方といった生活と価値観の相性をまず見る。恋愛感情は、その土台の上で後から育てるものと位置づけます。

なぜ今、この考え方が語られるようになったのか。背景には、婚活の軸そのものの転換があると言われています。年収や学歴といった条件を競い合う婚活は、比較の連鎖に疲れる人を大量に生みました。その反動として、条件から価値観へという流れが生まれ、その延長線上に「そもそも、ときめきすら入口にしなくていいのでは」という問いが現れた。つまりこれは、恋愛の否定ではなく、条件競争にもときめき任せにも疲れた時代の、第三の選択肢なのです。

「好きだから結婚」は、歴史的にはむしろ新しい

「恋愛感情を入口にしない結婚なんて不自然だ」と感じる人は多いはずです。けれど歴史を少しさかのぼると、景色は逆転します。恋愛と結婚を一つに結びつける「恋愛結婚」という発想は、実は近代になってから広まった、比較的新しい考え方だと言われています。それ以前の結婚は、家と家、暮らしと暮らしを結ぶ営みであり、情愛は結婚のなかで少しずつ育てていくものでした。詳しくは恋愛結婚の歴史の記事で書きましたが、日本で恋愛結婚が見合い結婚を上回ったのも、長い歴史から見ればごく最近のことです。

誤解しないでいただきたいのですが、私は「昔に戻れ」と言いたいのではありません。恋愛結婚が広げた自由は、かけがえのないものです。ただ、「好きという気持ちから始まらない結婚は不自然」という感覚のほうが、実は歴史の中では少数派だったという事実を知っておくと、心が軽くなる人がいると思うのです。恋愛から始めない婚活は、突飛な新発明ではなく、人類が長くやってきた結婚の形の再発見でもあるのです。

恋愛の高揚感が、判断を曇らせる仕組み

では、なぜ「好き」を入口にしないことが合理的になりうるのか。ここが恋愛心理の核心です。恋愛の初期に訪れる高揚感は、脳が相手に強く注意を向けさせる、いわば特別な興奮状態です。この状態にあるとき、人は相手の長所を拡大し、短所を小さく見積もります。「あばたもえくぼ」ということわざは、この仕組みを昔の人が正確に言い当てたものです。つまり恋愛の熱は、相手を見る解像度を上げるどころか、むしろ下げる方向に働きます。

そして、恋愛心理学で繰り返し確認されてきたもう一つの定番知見があります。情熱的な恋愛感情は、時間とともに必ず落ち着き、穏やかな愛着へと移行していくということです。ここに、静かな逆説が生まれます。熱がいちばん高い時期とは、判断力がいちばん低い時期でもある。その最大値の瞬間に、人生でいちばん長い契約を結ぼうとしている。冷静に考えると、これはかなり危うい順番です。熱はいずれ引きます。引いた後に残るのは、価値観と生活の相性です。ならば最初からそこを見ようというのが、恋愛から始めない婚活の言い分であり、私はこの言い分には十分な理があると思っています。

恋愛は「入口」ではなく「中で育つもの」

とはいえ、恋愛感情のない結婚生活を想像して、寒々しい気持ちになる方もいるでしょう。ここで、相談所の現場からお伝えしたいことがあります。私はこれまで、初対面ではときめきのかけらもなかった二人が、会うたびに少しずつ打ち解け、気づけばお互いを深く想い合って成婚していく姿を、数えきれないほど見てきました。始まりは「感じのいい人だな」程度。それが、約束を守ってくれる安心、疲れた日に急かさないでいてくれる優しさ、そういう小さな体験の積み重ねで、ある日ちゃんと恋になるのです。

心理学的にも、これは不思議なことではありません。人は繰り返し接する相手に好意を抱きやすくなることが知られていますし、自分の弱さを安心して見せられる相手には、親密さが深まっていきます。つまり恋愛感情には、火花のように一瞬で散る種類と、囲炉裏の火のように育てていく種類があるのです。恋愛から始めない婚活が育てようとしているのは後者です。だからこそ、価値観で相手を絞り込み、会う回数を安心して重ねられる結婚相談所という仕組みは、この結婚観と相性がいい。第一印象の勝負を何度も繰り返すのではなく、同じ相手と関係を深める時間に投資できるからです。恋愛は、入口に置くものではなく、関係の中で育てるもの。この転換こそが、価値観で選ぶ結婚の、いちばん豊かな果実だと私は考えています。

まとめ:始まり方より、育ち方

恋愛から始めない婚活とは、恋愛を捨てる婚活ではありません。恋愛がいちばん美しく燃える場所を、入口から関係の中へと移す婚活です。熱の最大値で契約を結ぶのではなく、価値観と生活の相性という土台を先に確かめ、その上で感情をゆっくり育てていく。歴史を振り返れば、人類はむしろこの順番を長くやってきました。

結婚の幸福を決めるのは、始まり方の熱量ではなく、育ち方の質です。ドラマチックに始まった関係が静かに冷めていくことも、穏やかに始まった関係が年月とともに深い愛情に変わっていくことも、私は現場でたくさん見てきました。もしあなたが「ときめかないから」という理由だけで可能性を閉じてきたのなら、一度、順番を入れ替えてみてください。始まり方は選べても、育ち方は二人でしか作れません。そして結婚の醍醐味は、間違いなく後者にあります。

もっと恋愛心理やモテる秘訣、魅力を高める方法を知りたい方は、こちらへ。
YouTube「モテ男TV」で、恋愛・結婚・男磨きのヒントを動画で発信しています。

▶ モテ男TV(YouTube)を見る

よくある質問

恋愛から始めない婚活とはどういう意味ですか?
恋愛感情の盛り上がりを関係の入口にせず、価値観の相性や生活の相性から関係を始めて、恋愛感情は一緒に過ごすなかで後から育てていくという婚活の考え方です。最近、婚活の世界でよく語られるようになりました。恋愛を諦めることではなく、恋愛が育つ順番を入れ替える発想です。
恋愛感情がないまま結婚して大丈夫ですか?
「一生ないまま」を前提にする必要はありません。恋愛心理学では、情熱的な恋愛感情は時間とともに落ち着き、穏やかな愛着へ移行していくことが知られています。また、繰り返し顔を合わせるうちに好意が育つことも定番の知見です。大切なのは、初対面の時点の熱量ではなく、尊敬できるか、安心して素を出せるか、生活の感覚が合うかという土台です。土台のある関係では、感情は後から育っていきます。
恋愛から始めない婚活はどんな人に向いていますか?
恋愛の駆け引きや盛り上げが得意ではない人、過去に「好き」という気持ちの勢いで選んで苦い思いをした人、結婚後の生活を大切にしたい人に向いています。逆に、感情の盛り上がりそのものを人生の楽しみとして最優先したい人には物足りなく感じられるかもしれません。向き不向きは年齢ではなく、結婚に何を求めるかで決まります。
婚活で恋愛感情が湧かないのは問題ですか?
問題ではありません。同じ悩みを抱える人は本当に多く、恋愛感情は出会った瞬間に在庫があるものではなく、安心と会う回数の中で後から育つものです。「ときめかないから縁がない」と初回で判断してしまうほうが、機会の損失としては大きいと感じています。穏やかに話せる、また会ってもいいと思える。その温度から始まる縁は、決して弱くありません。
人として好きだけど恋愛感情がない相手と、結婚してもいいですか?
「人として好き」は、結婚生活の土台としてむしろ強い相性です。高揚感は時間とともに必ず落ち着きますが、尊敬と安心は暮らしの中で増やしていけます。ただし、触れられることへの生理的な抵抗がある場合は別の問題なので、そこは切り分けて、自分の感覚を正直に確かめてから決めることをおすすめします。

関連ページ

← コラム一覧 スペック婚の黄昏:条件から価値観へ 恋愛結婚の歴史