世界の恋愛研究ノート関口美奈子 公式サイト
恋愛心理2026-10-30

プロフィールは、誰に宛てた手紙なのか

プロフィールを直すたびに疲れていませんか。宛名が決まっていないせいかもしれません。

この研究でわかったこと

この研究は、オーストラリアのクィア女性がデーティングアプリで自分をどう組み立てているかを、インタビューで探ったものです。分析からは四つのテーマが作られました。コミュニティの一員だと示す記号を使うこと、プロフィール作りで複数の視線に向けて自分を演じること、クィアとして「正しい」像を表せているかという自己判断、そして本物らしさを保ちながら望む相手に惹かれてもらう難しさです。常に自分を調整し続けることには心理的な負担があるという結果も示されました。

論文
「承認はいらない。私には鏡があって、自分を知っているから」:クィア女性のオンラインデート体験と自己構築を読み解く
“I don’t need validation. I have a mirror, and i know myself”: Unravelling the tapestry of online dating experiences and self-construction in queer women
掲載誌・公開
Current Psychology(2026-08)
方法
オーストラリアのクィア女性十一人への半構造化インタビュー(探索的な質的研究)
原典
https://doi.org/10.1007/s12144-026-09980-z

関口美奈子の読み方

金曜の夜、湯上がりのソファでプロフィール写真を選び直している場面を思い浮かべてください。「これだと頑張りすぎに見えるかな。でも気を抜いた一枚だと、本気じゃないと思われそう」。この研究が描いたのは、プロフィールが一人の相手への手紙ではなく、いくつもの視線が同時に読む掲示板になっている姿でした。誰に見せるのかが曖昧なまま、自分を組み立てている。私はそう読みました。

これは日本の婚活にも重なる部分があると思います。気になる相手、友人、親、担当カウンセラー、そして「こう見られたい私」。宛先が決まらないまま書くと、言葉はどんどん無難になっていきます。この宛名疲れは、写真選びそのものより、全員に同時に書こうとする作業から来ています。

もう一つ、研究には「正しい」像を表せているかという自己判断が出てきます。婚活でも、心の中に見えない採点表を持っていませんか。「結婚向きに見えるか」「女性らしく見えるか」。自分で採点して自分を削るうちに、惹きつけたい相手に届く前に、自分の輪郭が薄くなっていきます。論文の題に「鏡」という言葉が置かれているのも、他人の採点より、自分で自分を知っていることを手がかりにする姿勢を思わせます。

持てる人は、採点表よりも先に鏡を見ます。そして宛名をひとりに決めます。万人に好かれる自己紹介は、結局どの郵便受けにも入りません。宛名を決めた人の自己紹介だけが、誰かの郵便受けに届きます。

明日からの一手

  1. プロフィールを書く前に、読んでほしい人をひとり思い浮かべましょう。その人に宛てた一通の手紙として、冒頭の二文を書き直してみてください。
  2. 写真や言葉に迷ったら「採点されないための選択か、自分らしさを出す選択か」と自問します。迷ったときは後者を選んでみましょう。
  3. 載せる内容は、友人に見せても恥ずかしくなく、気になる人が読んでも嘘にならない範囲に絞ります。どちらの視線にも耐える言葉だけを残しましょう。
この研究の読み方の注意
対象はオーストラリアで、クィア女性と自認する十一人への探索的な質的研究です。日本の婚活や異性愛の利用者に当てはまると示した研究ではなく、ここでの婚活への翻訳は私の解釈です。

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解説:関口美奈子(恋愛心理研究家・作家)
のべ3万人以上の恋愛・婚活相談の現場から、海外の研究を日本の恋と婚活の言葉に翻訳しています。プロフィール

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