見せる素顔の濃さは、距離と周囲の目で変わっていた
引っ越した街で、プロフィールの写真を替えたくなったことはありませんか。
この研究でわかったこと
上海でマッチングアプリを使う、海外から来たゲイ男性19人に半構造化インタビューをした研究です。全体を貫くテーマは、新しい文化の中でプロフィールの見せ方をどう舵取りするか、でした。その舵取りには、相手との距離をどう扱うか、どこまで自分を明かすか、現地の人の受け止め方にどう合わせるか、という互いに関わり合う過程が見られました。さらに、使うアプリの種類、母国や家族から遠いと感じる度合い、明かしている程度、現地のLGBTQ+への態度によって、見せ方の戦略が変わるという結果でした。
- 論文
- 中国は私の本当の顔を知っている:越境の文脈における、海外出身のゲイ男性のデーティングアプリでの自己呈示
- 掲載誌・公開
- Sociology Compass(2026-09-30)
- 方法
- 上海でデーティングアプリを使う海外出身のゲイ男性19人への半構造化インタビュー
- 原典
- https://doi.org/10.1111/soc4.70259
関口美奈子の読み方
引っ越して最初の金曜の夜、まだ段ボールが残る部屋でアプリを開きます。自己紹介欄の前で指が止まり、「この街では、どこまで書こう」とつぶやく。この研究が描いていたのは、その迷いの中身でした。
面白いのは、見せるか隠すかの話で終わっていないことです。相手との距離をどう扱うか、どこまで明かすか、土地の受け止め方にどう合わせるか。その組み合わせで、使うアプリごとに見せ方が変わっていました。私にはこれが、素顔の濃淡の調整に見えます。全部見せるか何も見せないかではなく、場と相手を読みながら濃さを選んでいるのです。
もちろん対象は、上海で暮らす海外出身のゲイ男性です。明かすことの重さは人それぞれで、そのまま日本の婚活に当てはめることはできません。それでも、転勤や上京で環境が変わった人、実家から遠い街で相手を探す人にとって、素顔の濃淡という見方は使えると思います。初対面の相手に人生の全部を渡さなくていい。濃さを選ぶのは、嘘をつくこととは別の話です。
持てる人は、見せていない部分を後ろめたく思いません。安心できる相手には少しずつ濃くしていく余裕があるからです。自分を守りながら近づける人は、相手にも同じ速度を許せます。素顔は、安心が増えた分だけ濃くしていけばいい。
明日からの一手
- 引っ越しや転職の直後は、プロフィールを全部書き直さず、まず写真と一言だけ更新して、新しい環境での反応を見ましょう。
- 初回のメッセージでは、仕事や家族の深い話を急がず、休日の過ごし方など開きやすい話題から濃さを足していきましょう。
- 見せたくない部分は、嘘で埋めず空けておいてかまいません。安心できたと感じた時に、自分のペースで話せば十分です。
対象は上海でアプリを使う海外出身のゲイ男性19人の聞き取りで、結果は語られた経験の整理です。人数も限られ、異性愛者の婚活や他の地域にそのまま当てはまるとは言えません。
研究を、明日の会話に変える
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