心理学

エンダウド・プログレス効果とは
婚活のやる気が続く理由

関口美奈子

こんにちは。恋愛心理研究家の関口美奈子です。
婚活相談の場で、最初に聞く言葉はいつも似ています。
「まだ何も進んでいなくて」。
けれど私は、そのたびに同じことを伝えます。プロフィールを一文字でも書いた時点で、あなたはもうゼロではありません。
心理学には、最初から少しだけ進んでいると感じられると人は行動を続けやすいという「エンダウド・プログレス効果」という知見があります。婚活のやる気が続かないのは、性格や条件の問題ではなく、多くの場合、自分がすでに進んだ距離を数え損ねているだけなのです。のべ3万人以上を見てきた経験から、婚活を「続きから見る」ための考え方をお伝えします。

エンダウド・プログレス効果とは|すでに押されていたスタンプ

アメリカの研究者ジョゼフ・ヌーネスとシャビエ・ドレーズが行った、洗車サービスのスタンプカードを使った実験があります。一方のグループには、八個のスタンプで一回無料になるまっさらなカードを渡しました。もう一方のグループには、十個のスタンプで無料になるカードを渡しましたが、最初から二個分、あらかじめスタンプが押してありました。

必要な残りの個数はどちらも同じ八個です。けれど結果には差が出ました。最初から二個押されていたカードを持つ人たちの方が、最後までスタンプを集め切る割合が高かったのです。これが、エンダウド・プログレス効果と呼ばれる心理の仕組みです。人は「ゼロから積み上げる」よりも「すでに手の中にある進捗の続きを完成させる」ことに強く動機づけられます。

ゴールまでの距離は同じでも、スタート地点の見え方が違うだけで、人の粘り強さは変わります。これは根性や意志の強さの問題ではなく、進捗をどう認識しているかという、ごく単純な心理の設計の問題なのです。婚活という長い道のりにも、この仕組みはそのまま当てはまります。

婚活を「ゼロから」だと思い込む錯覚

婚活相談にいらっしゃる方の多くが、自分の婚活を「まだ何も進んでいない」と語ります。登録してから半年、お見合いを何度も重ねていても、成婚という最終ゴールだけを基準に測ってしまうと、途中のすべてが「ゼロ」に見えてしまうのです。

これは婚活で焦ってしまう人に特に強く表れる傾向です。周りの結婚報告を見聞きするたびに、自分だけが振り出しに立っている感覚に襲われる。けれど冷静に数えてみれば、プロフィールを整え、写真を撮り、何人もの相手と実際に会って話してきた経験は、決してゼロではありません。

ゴールだけを見る視点は、途中経過をすべて「未達成」という一色に塗りつぶしてしまいます。これは婚活に限らず、計画錯誤とも呼ばれる、見積もりの甘さとセットで起こりやすい思考の癖でもあります。「結果が出ていない、だから何も進んでいない」という等式は、実はかなり乱暴な計算なのです。

婚活は、すでに始まっている物語だった

エンダウド・プログレス効果を婚活に応用するなら、まずやるべきことは「何を進捗として数えるか」を広げ直すことです。登録した日、プロフィールを書き上げた日、初めてのお見合いに向かった日。これらはすべて、立派な一歩として数えてよいものです。

断られた経験でさえ、進捗から除外する必要はありません。会って、話して、自分に合う相手の輪郭が少しだけ見えてきたなら、それは失敗ではなく情報の更新です。フレッシュスタート効果という知見が示すように、人は区切りをきっかけに前向きになれますが、区切りは「ゼロに戻ること」ではなく「これまでの歩みを一度数え直すこと」だと捉え直すと、気持ちの持ち方はずいぶん変わります。

婚活を一本の長い道として眺めるのではなく、すでに歩いてきた部分と、これから歩く部分に分けてみてください。多くの方は、自分が思っている以上にすでに歩いています。スタート地点にまだ立っていると思い込んでいるだけで、実際にはもう数歩先にいるのです。

進捗を「見える化」する小さな習慣

進捗は、意識しなければ記憶に残りにくいものです。お見合いの帰り道に、今日気づいたことを三行だけメモする。月末に、今月会った人数と、そこから分かった自分の希望条件の変化を書き出す。こうした小さな記録が、婚活を「ゼロからの挑戦」ではなく「積み上がっているプロジェクト」に変えてくれます。

人に話すことも効果的です。友人や相談所のアドバイザーに「今月はこういう発見があった」と言葉にして伝えると、自分の中で曖昧だった進捗が輪郭を持ちます。学習性無力感に陥りやすいのは、成果が見えないまま時間だけが過ぎていると感じるときです。だからこそ、見えにくい進捗をあえて言葉にして、自分の目で確認する作業が要るのです。

記録や報告は、誰かに評価してもらうためのものではありません。自分自身に向けて「ここまで来た」と伝えるための、小さな儀式です。スタンプカードの最初の二個のように、婚活にも最初から押されているスタンプがあることに、まず自分で気づいてあげてください。

まとめ:婚活は、続きから始められる

エンダウド・プログレス効果が教えてくれるのは、人のやる気を動かすのは残りの距離の長さではなく、すでに歩いた距離の見え方だということです。婚活を「まだ何も進んでいない」という白紙の状態として見るか、「すでに数歩進んでいる途中経過」として見るかで、続けられるかどうかは大きく変わります。

のべ3万人以上の方とお会いしてきて感じるのは、婚活に疲れてやめてしまう人の多くは、能力が足りなかったわけではなく、自分の歩みを数え忘れたまま疲れてしまっただけ、ということです。あなたがここまで動いてきた一つひとつは、確かな進捗として記録されてよいものです。

もし一人で歩みを数えるのが難しいと感じたら、婚活の進み方を一緒に見てくれる相手を持つことも、一つの選択です。気になる方は、公式LINEから婚活のご相談を承っています。

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よくある質問

エンダウド・プログレス効果とは、どのような心理ですか?
最初から少しだけ進んでいると感じられると、人はゴールまでの行動を続けやすくなるという心理学の知見です。洗車サービスのスタンプカード実験で確認され、残りの必要数が同じでも、最初から一部が埋まっている方が最後まで達成する割合が高くなることが分かっています。
婚活で「進んでいない」と感じるときはどうすればいいですか?
成婚という最終ゴールだけを基準にせず、登録やプロフィール作成、実際に会った経験など、途中の行動すべてを進捗として数え直してみてください。小さな行動を記録したり人に話したりすることで、見えにくかった進捗が実感しやすくなります。
婚活のやる気が続かないときの対処法はありますか?
やる気が続かないときは、残りの道のりの長さではなく、すでに歩いた距離に目を向けてみてください。月ごとに会った人数や気づきを書き出すなど、小さな振り返りの習慣を作ることで、婚活を「ゼロからの挑戦」ではなく「積み上がっている途中経過」として捉え直せます。

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